ばあちゃんの、ままぼし
私が幼い頃、ばあちゃんが作ってくれたおやつが「ままぼし」だった。
ざっくり説明すると、ご飯を干して揚げたお菓子である。「まま(=ご飯)」を「干す」から「ままぼし」なんだと思う。
作り方は至ってシンプルである。
- 残りご飯を洗い、カラカラになるまで数日干す。
- 油で揚げる。
- 砂糖醤油で味付けする。
ばあちゃんは母に、炊飯器の釜を洗う時に一度ザルを通すよう頼んでいた。そのザルに引っかかったご飯粒を干すのである。米粒一粒も無駄にしないという、もったいない精神の現れだろう。
干す時もばあちゃんは工夫していた。スナック菓子の袋を開いて、内側の銀色を表にして、A4くらいの段ボール板に巻いて洗濯バサミで留めていた。この上に洗った米粒を並べて干せば、カラカラになった後もくっつかず、ポロッと取れるのだ。
ばあちゃんはこの板を日当たりの良い窓際に置いて、乾かした米粒をポリ袋に入れて少しずつ溜めておき、ある程度溜まってから調理していた。
この「ままぼし」、味も素朴だし見た目も地味だが、私と妹は「おいしい」とパクパク食べた。その様子を見ていたばあちゃんは、とても嬉しそうだった。
私がままぼしを初めて食べたのが、たしか4~5歳頃。
それからご飯が溜まるたび、ばあちゃんがままぼしを作って、私たちに食べさせてくれた。
でも、私や妹は成長するにつれ、市販のお菓子がよくなり、ばあちゃんがままぼしを作っても、あまり食べなくなった。それでもばあちゃんは、ご飯を干して溜めては、ままぼしを作っていた。
そして私が小6の冬、ばあちゃんは入院した。
その頃は毎日の米とぎは私がやっていたが、母から「もう、ご飯釜洗う時にザル通さなくていいから」と言われ、ばあちゃんがいないことを思い知らされた。
入院して半年後、ばあちゃんは亡くなった。
もう何年も、というかもう20年も、ままぼしのことなんか忘れていた。
先日たまたま似たようなレシピをネットで見かけて、あぁこれままぼしと同じだ!と思った瞬間、涙があふれて止まらなかった。
また食べたいなぁ。
そうだ、自分で作ればいいんだ。
でも次女がまだ2歳だから、揚げ物はもう少し先になるかな。